昆虫ぎらいな人が多い世の中ですが、トンボが苦手だという方は少ないはず。きれいな色の種類が多いし、スガタカタチもなかなかカッコイイ。子供の時、虫とりで捕まえたという経験もあるでしょう。子供のころと言えば、トンボって今よりたくさんいませんでしたか?赤とんぼは減った減ったと良く話題になりますが、夏のトンボ、たとえばシオカラトンボも、もっとたくさんいたような。それこそ、夏の大気の30%はシオカラトンボです。っていうくらいの勢いだったように思うのですけれど。
ところで、シオカラトンボはぜんぜん塩辛っぽくないんですが、あの白っぽくというか青っぽくなっているところを塩に見立ててそういうのだとか。昔のひとの感性はなかなかシュールですよね。それで、その白っぽいものは塩ではなくて、ワックス様のものでオスが成熟してくると分泌されてきて、あんなふうになるそうです。ワックスの下は尻と同じ黒い色なんですね。
子供のころは、黄色いシオカラトンボ、すなわちムギワラトンボがメスで、青いのがオスと思っていたのですが、そうではなく、若いオスはメスと同様に黄色くてだんだん黒くなるんだけど、ワックスがかかってきてあんな青っぽい色になるってことなのです。知りませんでした。
しかも最近の研究によると、このワックスはスグレモノで、お肌の敵、UVを50%カット。ま、ふつうの日焼け止め(SPF15とか)でもUVの遮断率は90%以上なので、そんなものかといえばそんなものなわけですが。シオカラトンボは、夏の炎天下に涼しい顔して飛んでいるので、この紫外線カットワックスが役に立つのかもれません(注)。つまり、シオカラトンボの塩はむしろ、塩辛みたいにならないためのものなのでした。
ことしの夏、「お、ワックス役立ってるな」と考えながら、シオカラトンボを見るのも面白いかも。
注:メスは背中側(上側)にあまりワックスがないそうで、ナゾです。
昭和46年生まれ。神奈川県産。妻ひとり猫ひとり。高校時代は丹沢に通って荷揚げのバイトしていたおかげでカモシカのようだったが、それも昔の話。その後、生態学者を志し、大学でできるだけひとの役にたたない研究をしたいと思っていたもののかなわず今に至る。現在は、お米を生産する法人で働き、自然栽培米に関わっていたりする。IT企業でも数年働いており、そのときの経験を生かして、農業にIoTをDIYで導入する手伝いをしたいと思っている今日このごろ。また、生き物にはやさしいけど、ひとには冷たいよねという評価もあったりする。